海外の採用責任者インタビュー Vol.3
海外現地の採用の責任者が語る、
海外で活躍するグローバル人材

NTT DATA(中国)有限公司
総裁
松崎 義雄

1986年、民営化後第二期生としてNTTに入社、現在のNTTデータの前身となるデータ事業部に配属、開発に携わる。
1992年から2年間、社内公募によりアメリカ留学、帰国後、NTTデータの中国・アジア地域で初の拠点となる香港拠点の立ち上げに携わり、その後5年間香港駐在。その後国内に戻り、アメリカ系企業2社を経てマカフィー日本法人の執行役員に就任。2009年にNTTに戻り、NTTデータのグローバル事業本部、2012年から中国駐在。

入社6年目のアメリカ留学以降、一貫して海外に関連したお仕事をされてきているのですね。

NTTを退職したあとのアメリカ系企業は、どちらも比較的規模が小さく、NTTとは違う経験ができました。マカフィーでは外資系企業とはいえ、執行役員として国内業務にみっちり取り組むような感じでしたが、そうすると国内業務ばかりになってしまい、だんだん面白くなくなってきて・・・、その頃にNTT時代の2年先輩と食事をする機会があり、NTTでは海外経験のある人間が少ない、戻ってきてくれたらうれしい、という話をいただき、再びNTTに戻ることにしたんです。NTTを離れていたのは8年間、その間は苦しいこともあったが、様々な経験ができて楽しかったし、本当に良い経験ができたと思っています。

NTTを退職されたあとは一社くらい経験されて、比較的早くNTTに戻られたのかと思っていたのですが、8年間、数社をご経験、というのは驚きました。出戻りっていうのもそれなりに勇気がいりますよね。

NTTデータって、中小企業がたくさん集まっているようなカルチャーがあり、そういう意味では中途採用者がなじみにくいところがあるかもしれません。暗黙知が必要な組織で、いきなり外から入ると物事がどう動いているのかわかりにくいというか。会社全体としてはドメスティックな文化と言えるかもしれませんが、私が戻ったのは海外部門だったので、戻って以来いままで、楽しくやらせてもらっています。国内部門だったら戻っていなかったかもしれないし、戻ったとしてもこれほど長くいなかったかもしれないです。

留学、海外駐在、外資系企業を経験されている松崎さんから見て、グローバル人材とはどんな人だと思いますか?

あまり意識したことはないのですが、ひとつ思うのは、閉じたところで仕事をする人と開かれたところで仕事をする人ってキャラクターが違うと思うんですよ。
たとえばアメリカの田舎の方だと、生まれた町を出ないで一生を過ごす人が大多数なんですよね。日本も、東京や大阪などの都市部は今は違うと思いますが、やはり地方だとそういう文化もあるだろうと思います。日本はテレビを通して全国区の話題に触れることができますが、アメリカではテレビでピザ屋のコマーシャルをしていると思ったら、歩いて10分のところのお店だったり。
その一方で、シリコンバレーで働きたい、とか思う人って、自分のいるところから飛び出して行ける人もいて、こういう人はやはりキャラクターが違うと思うんです。新しいことを楽しめる人。そういう人でないと、自分がいたところから飛び出して行けないんじゃないかな。自分でバウンダリーを作らない人が、いわゆるグローバル人材なのかな。

最近は松崎さんは若い人というと中国の方との交流が多いと思いますが、日本に帰って日本の若い方と交流したりすると、どう思われますか。

若いかどうかはおいておいて、今、日本は全体が内向きだよね。アメリカも一緒だと思います。先進国の多くが内に向いていて、社会がそうだから、当然ながら若い人たちもそうなってくる。逆に中国は経済成長のなかで普通の人たちまで外に興味を持っているフェーズですよね。旅行熱もある。今はそういう人が増えてきているフェーズですね。時代の波ってあるし、その国によっていつその波が来るかというタイミングは違うんですよね。日本もアメリカもヨーロッパもその波はもう過ぎちゃってる。中国はその波がいま、庶民の生活まで落ちてきているのを感じます。日本は草食系も増えてきていて、あぶないなぁと思いますよ。

日本と中国での採用の違いは?

採用そのものの違いというよりも、日本の採用は新卒採用が中心で、何年もかけて育成するということが前提の採用だけど、一方で今私が中国でやっている採用は何年もかけて成長してもらうということはないので、即戦力を求めています。
でも中国で日本向けのオフショア開発をやっているところなどは、けっこう新卒を採用してますよ。日本式の開発の処方とかプロジェクトマネジメントをみっちりと教え込む、これは日本に近い採用の仕方ですね。
一方で私は中国のなかのお客様向けの業務なので完全に即戦力の採用です。プロジェクトの属性によってどういう人が必要かというのが違ってくるので、日系の銀行のお客様なら日本的なやり方をわかってないとできないし、ドイツ系の自動車業界などはあまりいないんだけどドイツで育った中国人を採用したり。語学もその場合は英語メインで業界知識があるような方を求めます。

日本向けの仕事をしてた方でも中国でずっとやっている方はプロジェクト管理の能力や意識が日本国内と違っていたりする、というお話も聞きますが、それで苦労することなどは?

お客さんが求めるレベルによると考えています。人に限らずモノもそうなんだけど、日本のモノって機能が多すぎ、で、値段が高すぎ。これじゃ生き残れないよと思いますね。日本が人口減で市場が伸びないなかで海外に市場を求めるのなら、個人の消費者が求めているレベルがマーケットによって違うということをまず大前提として、それを判断して事業戦略をつくっていかないと勝てないんです。
時代の波とか流れとかを見ることも大切ですね。弊社も日本以外のビジネスを増やして成長を図っていますが、国内業務専門の人間がマジョリティを占める会社なので、国内で仕事をしているメンバーは日本のやり方しか知らないんだけど、海外事業となるとやはり別の視点が必要なんです。
例えば、中国流のやり方が身についている人が日本の金融業界をお客様に、というのはうまくいかない。でも日本の細かいドキュメントを作るメンバーを中国のお客さんのところに持って行ってもダメなんですよ、早く対応しろ、と言われる。それがわかってないとダメ。違いを分かって対応できるかどうかがすごく大事なんですよね。同じ人が両方できるようにというのはなかなか難しいので、適材適所を心がけていかないと難しいんですよ。良い悪いではないと思っています。つまりは時代の流れ、市場の流れに合わせて人材採用も変えていくということです。

海外で働きたいと思っている日本の若い人たちに一言メッセージをお願いします。

日本で海外とか外に目を向けてみたいっていう人はやはりポジティブだと思うんですけど、でも言葉だけできても通用しません。海外とか日本とかいう意識よりも、自分の強みとなるものが何かという意識を作っていかなとだめだな、と思います。
私も自分を顧みて、自分の強みってなんだろうって今でもわからないけど、意識して得意な分野を作っていくことが大切なんですよね。そうしてその人の強みが魅力になり、仕事にも役立つ、そうするとどんどん可能性が広がります。
私の日本でお世話になっている上司が、「月から見よ」ということをよく言うんです。つまり、俯瞰的に物事を見てみるということですね。
それから「仕事は外接円進めよ」、これはつまり、一つの仕事を一つの円とみなしたとき、その円の外にまずは四角を書くように仕事をする、その次は更に外に円を書くように仕事をする、そうやって少しずつできる仕事を広げていく、少しずつでいいから得意技を広げていけということをメンバーに言うんです。私もそう思います。ひとつ、なにか得意なことを身につければそれに近いところをどんどん広げていけるようになる。海外で仕事をする前にそういうマインドでスキルセットとか経験値を増やしていけるタイプになれば、おのずと日本であろうが他の国であろうが通用していく人間になれるので、そういうことを意識していけばいいだろうな、と思います。

なるほど。実は最近、日本の方で、新卒やそれに近い方が中国で働きたいという相談に来られることが多いのですが…

やめた方がいいですよ

そうなんですよ。もちろん、新卒では就業ビザが取れないので無理なのですが、その方のキャリアを真剣に考えたら、いきなり中国(海外)に来ると、他では通用しない人間になってしまう可能性があるんですよね。日本人はどこにいても現地の事情を理解していると同時に、日本人らしさも求められるので、日本でしっかりとビジネスマナーや日本人としてのビジネススキルを身に着けてくることも大切なんですよね。

そうですね。もし若くして来るのであれば、それこそ中国語もネイティブレベルにマスターして、中国の中でキャリアを積むという意識であればそれは良いと思いますけど、「ちょっと行ってみようかな」という気持ちの方も多いんじゃないかと危惧しています。日本の教育が今は平均点を目指しているといわれてますよね、突出しているのはよくないという風潮がありますが、やはり海外でやっていくには突出しないと。失敗してもそれがエネルギーにかわるようにね。

若手の方って、平均点でもいいんですけど、今成功しているというか頑張っている方って、何か自分の得意分野を見つけている人が多いと思います。

それがないと自信も持てないですよ。

自負というか自信があればこそ、他のことも頑張れるのかなと思います。

私の強みはあっちこっち行っているので、何が起こっても驚かないというところですね。

海外にいると驚きの連続ですよね。それに冷静に対処できるのは強みですね。

毎日、「ああまたか」ということの連続ですよ。でも「ああ、またか」と思って受け止められるんです。

それってほんとに強いことだと思います。今日はどうもありがとうございました。